ブルースカイ・桜庭一樹◇ハヤカワ文庫

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

富士見ミステリー文庫などで活躍する著者の、SF作品。

1627年のドイツ、魔女狩りが行われ始めたある村。村はずれの水車小屋に住んでいるマリーとその祖母にも魔女狩りの手が伸びてくる。
その時、空から見慣れない格好の少女が降ってくる。マリーは彼女を「アンチ・キリスト」と呼び、一緒に暮らし始めるのだが…

という感じで始まる、いわゆるタイムトラベル物?

富士見ミステリー文庫の「GOSICK」シリーズ等とは、かなり趣が違う作品になっている。
仕組みとしては、その時代を生きている人の前に、突然、ひとりの少女が現れて、事件に巻き込まれる(?)という感じなのだが、その時代の主人公視点で、書かれているのが面白い。どう考えても、このタイムトラベラが話の主軸になっているのだけど、この視点で書かれているために、読者にはどういう状況なのかがおぼろげに分かるものの(日本人の女子高生らしい)、主人公達にとっては、異物にしか見えないし、言語によるコミュニケーションも、ほとんどとれない。第2部は2022年シンガポールが舞台のため翻訳機を通してのコミュニケーションはとれているのだが、これも、微妙に噛み合わない…

この状況が、かなり面白い。現代のようにメールなどの言葉がなくても、一緒にいるというだけで、何となく安心するという、人のつながりみたいな物がテーマだと思うので。

そして、最後の章で明かされる、タイムトラベルの真実が、残酷で切ない。そこで明かされる「ブルースカイ」の意味が分かるところはかなり悲しくなってしまった。

ちょいネタバレになるけど、感じとしては、すごくちゃんとプロットを練った、「ドニーダーゴ」な感じがした。

しかし、この人は破滅に向かう話を書かせると、もの凄い破壊力を発揮する人だと思う。なので、最近「GOSICK」シリーズのラストがかなり心配になってきていたり(作品内でも臭わせつつあるし)…。

しかし、オビのコピーはちょいとネタバレが過ぎるんじゃない?