いばらの王(6)・岩原裕二◇エンターブレイン

いばらの王 (6) (ビームコミックス)

いばらの王 (6) (ビームコミックス)

コミックビーム連載のダークホラー完結巻。

治療不能の病気「メデゥーサ」に感染した患者達を、将来治療可能な時代が来るまで、コールドスリープするという計画が実行された。しかし、突然コールドスリープが解除され、施設内には怪物達が巣くっていた。カスミをはじめとする患者達は生き残るために、施設の脱出をはかるのだが…

と、はじまったこの作品もめでたく完結。

いやはや、面白かった。前巻でなぜこんな事になったのかのネタバレがあり、かなり盛り上がりつつの今巻だっただけに、風呂敷を畳むだけかと思っていたら、それを凌駕する勢いの盛り上がりっぷり! 今まで張り巡らされていた伏線やらキャラも見事に作用し、アクションも小気味よく、まさにクライマックス! 作者である岩原氏のコメントを読むと「ハリウッドのB級映画(低予算)」を目指してうまくいった様なことを書いているが、なかなか、B級でもかなり上位な物になってるんじゃないだろうか。

特に氏の特徴である太めの線画で描かれるアメコミのようなメリハリのある陰影の作画が作品の雰囲気に見事にマッチしていたのではないだろうか。
でも、女の子は柔らかい感じでかわいく描かれていたり…

しかし、アニメか実写で動いている「いばらの王」を見たいなあ。かなり、面白いと思うんだけどなぁ。個人的には、音楽は硨島邦明氏が希望だったり。

話自体も、良くある閉鎖された空間からの脱出物かと前半思わせておいての、風呂敷のひろげっぷりがかなり気持ちよかった。いい意味で、期待を裏切られた感じ。なぜに、コールドスリープが解除されたのかのネタ晴らしや、カスミの双子の妹、シズクの現在の消息を教える部分は、鳥肌が立つほど。なんか、綺麗な推理物を読んでいる気分になった。「いばら」ってそういう意味だったんだ!

ラストシーンも、かなりハッピーエンドな感じになっていて、読後感もさわやかだったり(まあ、それまでが、かなりの衝撃的な事実が畳みかけられるんだけど、終わりよけりゃそれでよし(笑))。
なんか、1巻目からまた一気に読み直したい気分。

この作品が気に入ったのなら、同じようなダークな雰囲気の「クーデルカ(全三巻)」もおすすめ。ゲームのコミカライズとはいえ、こちらもかなり面白い。
でも、今は見つけるのが難しいかも…

ともあれ、3年間楽しませてもらった作品。
次回作も、かなり楽しみにして待ってます。