姑獲鳥の夏・監督■実相寺昭雄◇ヘラルド映画

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京極夏彦の通称妖怪シリーズ第一弾の映画化。

昭和二十七年、夏。都内にある産婦人科の医院、久遠寺医院の娘、梗子が二十ヶ月を過ぎても、妊娠状態のままだと言う噂が流れていた。同時に、久遠寺医院では、赤子が死産や失踪、梗子の夫である牧朗も密室から失踪するという事件が起きていた。そこで、小説家である関口や京極堂などの仲間が調査に乗り出したのだが…。

いや、よくぞここまでと言っていいくらい、原作の世界を再現した映画。と、同時に最初から最後まで、実相寺演出が堪能できる、実相寺映画。
原作が発表されてから十年、やっと映像化されたとおもったら、かなりの出来で自分的には大満足ですよ!

まずはキャスト、まあここまでの人気作、どんなキャストでも文句言う人は言うだろうけど、自分的にはかなりイメージに近くて良かった。原作でも怖い顔と表現されている京極堂堤真一は、いつも不機嫌そうだし、猿みたいな関口君の永瀬正敏はいつもの格好良さのかけらもない、お猿顔で挙動不審、ヤクザみたいな木場修は、ごつい顔の宮迫。白いスーツ姿はまさにヤクザみたい。で、探偵こと榎木津は阿部寛!もう少し、はじけた演技がいいなと思ったけど、姑獲鳥の頃は、まだちょっと変な人だったんだよなあ(暴走するのは魍魎の匣から)。中禅寺敦子の田中麗奈はハンチングが似合っていてとても良い。
そしてなんと言っても、久遠寺涼子(梗子)の原田知世!清楚で可憐で、しかも怖い!キャストを聞いたときから合ってるとは思っていたけど、はまりすぎ!こりゃ、関口君も惑わされるわ…

サブキャラも出番が少ないながらも、そうそうこんなの!と思うほどはまっていて、続編が楽しみになる。和寅やら、里村医師、鳥口なんかは次作あたりから活躍するのかな?

映画自体も、シナリオはストーリーラインをほぼ忠実にアレンジ(というか刈り込み)をしていて、ミステリ寄りになっている。しかし、演出が実相寺氏ということを考えてそうしてあるのだと思う。画面自体は斜めだったり、歪んだり、物影だったり、舞台っぽくなったりと実相寺氏お得意の演出技法でかなり幻想的な世界を構築している。なので、あの幻想的な感じなのにミステリという原作特有の空気が再現されていて、かなり満足ですよ。
あと夏!夏特有の高い空や空気感がとても素晴らしい!

まあ、トリックやらなんやらは、えーっ!となる人もいるとは思うけど、まあ、原作通りなんでね。映像で、実相寺氏だから絶対物影処理だと思ったら、こう来たか!と唸ってしまった。映像的に嘘をつかず、上手い処理だなあと感心したり。

と、かなり自分は褒めてるけど、原作同様、ダメな人には全くダメな作品だと思うんで、その点は注意したほうがいいかも。

原作ファンや実相寺演出が好きな人にはおすすめな作品。ただ、見る前後に、原作を読むこと、そうすれば楽しさ倍増!

堤真一の低音でご託並べられると、そうかな、と思ってしまい、関口気分が味わえますぞ!

最後に、京極夏彦の完璧な演技、つーかメイク?(まじでそっくり!)に大爆笑しちゃダメ(笑)


今なら、薄くなって読みやすくなった文庫版で予習、復習するのもいいかも。

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 上 (講談社文庫)

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 上 (講談社文庫)

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 下 (講談社文庫)

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 下 (講談社文庫)