Jの神話・乾くるみ◇講談社文庫

Jの神話 (講談社文庫)

Jの神話 (講談社文庫)

発表する作品が全部凄いオチになる作者のメフィスト賞受賞作にしてデビュー作。

読んでおきたかったのだけれども、なかなか見つからず文庫版をやっと購入。

いやー、凄かった凄かった。全寮制のカトリック系の女子高を舞台に起こった、生徒の死亡事件。その事件の調査を依頼された、通称「黒猫」と呼ばれる女性。事件は、とんでもない事態へと発展していく。

一応、学園内の描写では主人公となる坂本優子視点では、学園内が少しずつおかしくなって行く様子が描かれ、黒猫の方では、事件についての資料を徐々に集めていく。館系の本格ミステリと、女探偵物を交互に進めていくと言った内容になっている。学園内では、女子高特有の百合的な展開があったりしてどきどきしたり(笑)
「黒猫」視点では、出来る女性探偵の格好良さというか、でも、生物学の知識がバンバン出てきて、今風のミステリ小説を楽しめる。でも、微妙に内容がシンクロしたり…
二視点ものはこういうところが面白い。特に、どちらにも登場するキーワード「ディック」が、学園内と外では違う意味を持っているようで、つながっているようなもどかしさが、たまらない。

しかし、その本格風味も解決編直前までで、解決編が始まったとたん、なんというかバイオホラー風味へと内容がスライドいていく。ここからは、なんと言ったらいいか、このオチでいいのか?と、思ったりもしたり(笑)ある意味、最初から犯人の名前言ってるんだよね「ディック」って(笑)

あれほど突飛ではないけど、映画「宇宙からのツタンカーメン」を思い出したりした(笑)あれもびっくりしたなあ、オチ。

自分は、「マリオネット症候群」とかを先に読んでいたので、そんなに面食らわなかったんだけど、これは初めて読んだらショックだろうなあ。
こういうのがあったから「メフィスト賞はよく分からない」的な評価があったりしたんだろうなと思ったり。
ただ、この作者のテイスト、一度はまるとたまらなく癖になる味のような物がある。まるで、ブルーチーズのような。物語に対する裏切り感がたまらない。
どんなテイストかというと、この文庫の解説が小森健太郎というと、分かるかもしれない…

自分もこのテイストにはまってしまい、この作者の作品「塔の断章」が初読だったのだが、それ以来はまり、こつこつと集めている。

さあ、これから「匣の中」探さなくっちゃ!