絶望系 閉じられた世界・谷川 流◇電撃文庫

絶望系 閉じられた世界 (電撃文庫 1078)

絶望系 閉じられた世界 (電撃文庫 1078)

涼宮ハルヒ」シリーズで有名な作者の新刊。

オビやあらすじにも書かれているとおり、かなり実験作風味。今までの氏の作品が好きでも、かなり評価が分かれそうな作品。

涼宮ハルヒ」シリーズは、かなりなSF系なストーリーと設定を、ライトノベル的な所に落とし込み(キャラクターなどは特にライトノベル風味)、それでいて、読後感はちゃんとSFしているという、面白い作品だった。主人公の語り口調などから例えると、「萌え要素の強い神林長平風味?」とでも言えるかもしれない。

しかし、この「絶望系」は、なんというか、かなりアングラな小劇団風味なテイストになっている。

主人公達の名前から想像すると、日本神話をベースにしてるんじゃないかとも思うんだが、ただ引用しているだけとも思える。
導入部は、かなり衝撃的で、どうなるんだろうと思わせるのだが、最終的にはかなり小さい箱庭的な話に落ち着いていく(衝撃は強いが…)。

多分、誰かの視点に固定していた方が、衝撃が強くなったかもしれないので、かなり惜しい。あと、途中で情報を出しすぎな感じがする。ミステリではないのだから、もう少し出し惜しみしても良かったのでは…

ストーリーなどは全然違うが、映画「ドニー・ダーゴ」や「サイン」なんかと、雰囲気というか全体に漂う空気が似ている感じがする。なんか、ミニマルな閉じた感じが(ま、タイトル自体がそのものだけど…)

ただ、安定シリーズがあるのに、こういう方にも挑戦してしまうというのはすごいと思う。氏のSFを読んでみたいという気持ちが沸いてくる。

とはいえ、キャラクタ造形や文章の読みやすさは流石なので、小劇団のお芝居などに興味がある人は一読してみては?