ローレライ・監督■樋口真嗣◇東宝・フジテレビジョン

http://www.507.jp/index.html(公式WEB)

福井晴敏氏との共同企画の映画版で、樋口監督初の本編込みの監督作品(ミニモニ。の映画はヒグチしんじなので、ノーカウント(笑))

小説版は、2003年版のこのミスで2位になったり、吉川英治新人賞をとったりしていたが、2年近く遅れて、やっと完成したのがこの映画版。
よく原作版と小説版のことを表記してたりするが(オフィシャルもそうですな)、正確に言うとチト違う。なので、小説との違いというのはあまり気にしなくていいかも。と言うより、同じプロットで文章に特化したのが福井版、映像に特化したのが樋口版と思った方がいいかも。

ちとネタバレがあるので、注意!

舞台は、終戦間際の日本、海軍の朝倉大佐(ちゃんと「だいさ」っていってる!)の命により、極秘任務を遂行することになった絹見艦長以下乗組員の活躍を描いた海洋冒険物。
一応、第二次世界大戦を舞台にしているけれども、正確な歴史描写とかはあまりないので(最低限の描写のみ)、歴史戦記物と見るよりは、海洋冒険物風味の架空戦記としてみた方が楽しめると思う。台詞に関しても、日本軍風な感じで、わかりやすく翻訳した感じ。ここら辺に詳しいミリタリーマニアの人とかは、色々言いたいことが出てくると思うけれども、監督以下スタッフは、分かって嘘をついてるので、気にしない気にしない…(じゃないと、一般の人には???になっちゃう)

この映画、最大の見所は主役とも言うべき潜水艦、伊号507だろう。フランスのトンデモ潜水艦「シュルクーフ」(殆ど活躍せずに商船と衝突、で沈没)を、接収したドイツ軍が改造した物を、日本が接収したという設定だが(ややこしい)、これは、ただ旋回式砲台が使いたかっただけだろう!といいたくなるほど、素晴らしいデザイン!正直、艦橋と砲台以外は実在の潜水艦というより、東宝のスーパーメカというか「ふしぎの海のナディア」版のノーチラス号からマイティジャック分を抜いたというか、かなりケレン味の効いたデザイン。福井版を読んだときはどんなモンだろ?と思っていたのだが、夏のWFで初めてプロップ用の模型を見たときには「こりゃあ、すげえ」と思ってしまった。

これが、急速浮上しつつ砲台を旋回!標的に向かって砲撃!なんてシーンはもう涙もの!こういう画が実写で見られる時代になったんだなあ、としみじみ感動してしまった。さすが、分かってらっしゃる。
画面構成に関しては、艦内などの人物をメインにした物はFIX画面を基本したオーソドックス、兵器関係などのメカ描写に関しては、派手さを重視した画づくりとメリハリを利かせてある。とはいえ、石黒賢の眼鏡を碇ゲンドウばりに光らせてみたり、手前の人物を極端にぼかしてみたりと、アニメ的手法を最大限に生かしてある(演出効果じゃないけど、絹見艦長こと役所広司の衣装、あれグローバル艦長(ネモ船長でも可)だろ、どー見ても)。それと、タイポグラフィーにも、かなり気を遣ってあり、読みやすく、しかもかっこいい!邦画ではここに気を使う人が少ないので、うれしい限り。

音響も、かなり迫力があり、爆雷攻撃時などはちょっとしたアトラクション風味に椅子が揺れるので、是非とも音響のいい劇場で見て欲しい(個人的には、仮編集時に付けていたという東宝効果音バージョンも見てみたい気がするが(DVDについたりしないかなあ…))。

内容に関しては、「ローレライシステム」がらみの部分などは、ベタといえばベタな展開なのだが、軍がらみ、特に朝倉大佐のしようとしたことについては、全国ロードショーの作品でよくやったなぁと思う。開巻「罪と罰」についての議論があるのだけど、オブラートにくるむためにたとえ話を利用しているのだと思う。東京に原爆を落とすといっているが、軍に対して切腹を求めているんじゃなくて、当時の日本の神、天皇陛下(皇居)に責任を求めているんじゃあないだろうか?だから、朝倉大佐は東京にこだわったのではないだろうか。軍ならば、横須賀とか色々あるしね。

途中、伊号内で反乱が起こったりするのだが、彼らの主張も悪というわけではなく、ただ、日本という国への考えが少し違ってしまっただけなので、どちらの気持ちも分かってしまい、つらかった。特に「大人が起こしたことに子供を巻き込むな!」という台詞は、スタッフと同世代(はじっこだけど)としては、胸にずんときた。戦時中の台詞として言っているが、スタッフからのメッセージなのだろうなとおもう。
ただ、そういう考えさせる部分もあるというのが娯楽作品の条件だと思うので、あまり構えずにワクワク感だけで観劇し、後から少し考えてみるのもいいかもしれない。

興行成績もかなり良いらしいので、ファンとしてはうれしい限りだ。是非、ヒットしてこういう映画が続けて作られる下地が出来てくれるとありがたいのだけど。個人的には、良くフジテレビが金を出したなあと思うけどね(素晴らしい!)。

パンフレットも、かなり豪華な布陣で制作されており、700円でもお得感が漂う。特に、専門用語の解説などは、知らない人には副読本として重宝しそう。

自分たちのやるべき事を最大限やろうとする人達の話なので、戦記映画に興味がない人にも、お勧めの一本!

とにもかくにも、2時間10分あっという間に過ぎてしまうので、興味がある人は是非とも劇場で、お試しあれ。

ローレライ オリジナル・サウンドトラック

ローレライ オリジナル・サウンドトラック

気に入ったら、このサントラも。狭い空間にいる気持ちになれること間違いなし!
しかし、これと、プリキュアのサントラが一緒の人というのも凄い話だ(笑)