THEビッグオー パラダイム・ノイズ・谷口裕貴◇徳間書店

THE ビッグオー

THE ビッグオー

1999年、2002年に放送された同名アニメのノベライズ。というよりも、外伝的作品。
時間軸的にはファーストシーズンのどこかに起きた事件の物語となっている。

物語の内容的にもキャラクターの描写も、かなりアニメ版の雰囲気を再現してあり、ビッグオーが好きな人にはお勧めの一冊。

外伝とはいいながらも、アニメ版の根底に流れていた、40年前に失われたメモリーの断片的な情報が描写されていたりと、本編とのリンクもあり、ビックオーの世界を楽しむ上でははずせないだろう。

ただ、分量的にはアニメで言うと1時間スペシャルといった長さなので、エンジェルやベックといった、本編の魅力的な悪役が登場しないのは残念なところ。(個人的にはノーマンの活躍がほとんどないのも悲しい)

とはいえ、この小説のオリジナルキャラクター達もどこか根底に悲しみをたたえたビッグオー的雰囲気をまとっており、動いている姿を見たくなってくる。(いろいろな事情があるのだろうが、せめてオリジナルキャラクターのイラストがあれば良かったのだが…)
特に、このエピソードの重要人物であるイアンとR・ドロシーの交流などは、あの一本調子のしゃべり方が脳裏に浮かんでくるようだ。

もちろんキャラクターだけではなく、ビックオーの見所であるメガデウス戦もたっぷりと描写されており、メカが好きな人へ配慮も十分だ。

ただ、終盤はメカアクションや事件に対する謎解きなどが畳みかけるように進んでいくのだが、そこで多少、整理が出来ていない部分もある感じだ。そこが少々残念なのだが、その力押し的な部分もアニメ版では魅力になっていた。なので、そこは画がない小説としてのアプローチをして欲しかったところだ。

本書のデザインなどはマッハ55号が手がけているだけあって、ビッグオーの雰囲気に合っていて、自分は好きなのだが、4ページある口絵イラストが、サンライズ関係の人ではなく、かなりリアルタイプにされたキャラクター達のイラストになっており、少し雰囲気が違うかなーと、多少思ったりもした。
アニメ系の人がダメならば、マガジンZでコミック版を連載していた有賀ヒトシ氏などの方が良かったなーと自分的には考えたり(出版社が違うので難しかったのかもしれないが…)。

そして、この小説の問題の部分は、流通などの関係があるだろうが、ほとんど書店で見かけないところだ。発売日は、セカンドシーズンが放映中の2003年なのだが、自分はつい最近amazonで入手した。
それは、発売日近辺に発見できずに、存在を失念していたからだ。同時期に発売された双葉社のムックなどは、今でも書店などで見かけるのだが…
ちなみに、こちらもかなりお勧めなムックで、インタビューやストーリーガイドの他に、最終話のカット前のシナリオが掲載されており、読み応えがある物となっている。

と、自分的には多少の不満がある物の、小説本編についてはかなり満足度の高い本なので、是非とも、アニメ版のサントラを聴きながら、休日の夜にでも楽しんで欲しい一冊だ。

THEビッグオー オフィシャルガイド

THEビッグオー オフィシャルガイド