蒼穹のファフナー・沖方 丁◇メディアワークス

蒼穹のファフナー (電撃文庫)

蒼穹のファフナー (電撃文庫)

1月に放送終了した同名アニメのノベライズ。
アニメ版においても、文芸総括、後半のシリーズ構成、脚本を担当した沖方氏のリニューアルファフナーという感じに仕上げられている。

時間軸的にも、アニメ版で言うところの4話位までのストーリーになっている。そもそも、文庫一冊で、全26話のストーリーをやるのは無理な話だわな。なので「何となく気にはなってるんだけど、ノベライズで話読んでみるか」というタイプの人にはおすすめできない。

だか、アニメ版を全て見て、前半戦の展開を???となっていた人や、これからファフナーを見ようと思っている人にはおすすめの一冊。

そもそも、この蒼穹のファフナーというアニメ作品は、前半12話くらいまでは、登場人物達の没コミュニケーション具合や、演出などでの説明不足のために、「多分こういう話なんだろうけど、なんでこういう行動するの?」という、見ている人を置き去りにした感じが強く、スタッフの豪華さなどに比べ評価が低かった。しかし、後半シリーズ構成まで変更し(後ろにZとかどっかーんとか付くような何年も続くような作品でなく2クール程度の物ではかなり珍しい)、沖方氏が手がけるようになってから、格段に面白くなっていき、評価も上がっていったという珍しい作品だ。(ただ、前半でもおっと思うようなシーンや演出があり全体的にダメなわけではないのだが…。そうでなければ見てないし)

沖方氏のファンならば、HPで見たかもしれないが、第一話の放映日に日記に「おれが書く!!!」といった趣旨の言葉が上がっていたので、不満だったのだろうと思っていたので、どんな形であれリベンジ出来て良かったのではないだろうか?

内容に関しては、アニメとは設定などが多少変更されている部分はあるが、ほぼキャラクター達の内心と、行動理由のアップデートなので、アニメ版を見ていた人にはすんなりと入っていけるのではないだろうか?
特に、アニメではよく分からないうちに死んでしまったファフナーのファーストパイロットである委員長などはかなり力が入った描写になっており、こういうのが見たかったなーと思ってしまう…

キャラデザの平井氏もかなりの数のイラストを描きおろしで描いておりそれだけでも、ファンならうれしいだろう。(余談だが、数年前に電撃HP誌に載っていた平井氏のイラストコラムは、まとめて本にならないのだろうか?銃と女の子というかなりなマニアックさで好きだったのだが…)

あと、CDのBGM集に付いてきたドラマCDの脚本も沖方氏が担当していて、こちらは4−6話の間の話を電話を通した会話劇に仕上げてあり、なかなか面白い。なぜに、島民がお墓にああいうことをしたのか、総士は何を考えていたのか?なんで、一騎は島を出ていったのかなどの補完になっていて、ノベライズとあわせて聞くと、アニメ版前半部がよく分かるのではないだろうか?

こういう補完部分も含めて、最終的には面白い作品になった、蒼穹のファフナー。ダメな作品だと思って途中で見るのを止めてしまった人や、沖方氏のファンは、ノベライズを読んでからもう一度アニメ版を見直すと、また、違った意見が出るのではないだろうか?

個人的には、ラーゼフォンのように、TV版を構成し直した劇場版が制作されるとうれしいのだが…