新耳袋 第十夜・木原浩勝・中山市郎◇メディアファクトリー

新耳袋―現代百物語〈第10夜〉

新耳袋―現代百物語〈第10夜〉


様々な人から取材した怪談を集めたシリーズの最終巻。

流石、ロングシリーズというか他の怪談本に比べると、格段に読みやすい文体でまとめられている。
全てを、自分の実体験、あるいは口伝という感じに統一されているのだが、そこがまた良い。あまり、主観的なことを書かずに、こういう事があった、と淡々と怪現象が語られていく。

1話を最大5ページほどのまとめているのも、読みやすさの秘訣だろう。長く続く話も、エピソードごとに話数を区切っていて、読みやすさを念頭に書かれている。

よく実体験怪談集とかがあるのだが、だらだらと状況説明とかが長くて、肝心の部分が怖くない!なんて本がたくさんあるが、もう少し考えた方がいいと思う。

自分的に良い怪談本だと思うのは、この新耳袋と「超怖い話」シリーズ(関連含む)だと思う。

特に、この新耳袋シリーズは、怖いというよりも、少し不思議だなあという話がたくさん収録されていて、楽しい。何気ない日常で、自分も遭遇しそうな、少し不思議な話など、あり得そうで、少し怖くなる。

今巻は、今までと違い、章立てになっておらず、というか全て最終章と言うくくりになっている。その名前が「百物語」。原点回帰なのだろうか?

自分的な好きなエピソードは、件(くだん)の話が決着するものだ。自分も、このシリーズを読む前に、小松左京氏の「件の母」という短編を読んでおり、気になっていた話なので、実際の目撃談などを読んで、どきどきしていたのだが、最終巻で決着が付くなど、本当に何か因縁を感じてしまう。

ともあれ、長く楽しませてもらったシリーズ。これで最後というのも寂しい限り。出来れば新シリーズなんかを希望してみたり。

といっても、自分は怖いんで、2日にかけて読んでたり(笑)