ブルースカイ・桜庭一樹◇ハヤカワ文庫

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

富士見ミステリー文庫などで活躍する著者の、SF作品。

1627年のドイツ、魔女狩りが行われ始めたある村。村はずれの水車小屋に住んでいるマリーとその祖母にも魔女狩りの手が伸びてくる。
その時、空から見慣れない格好の少女が降ってくる。マリーは彼女を「アンチ・キリスト」と呼び、一緒に暮らし始めるのだが…

という感じで始まる、いわゆるタイムトラベル物?

富士見ミステリー文庫の「GOSICK」シリーズ等とは、かなり趣が違う作品になっている。
仕組みとしては、その時代を生きている人の前に、突然、ひとりの少女が現れて、事件に巻き込まれる(?)という感じなのだが、その時代の主人公視点で、書かれているのが面白い。どう考えても、このタイムトラベラが話の主軸になっているのだけど、この視点で書かれているために、読者にはどういう状況なのかがおぼろげに分かるものの(日本人の女子高生らしい)、主人公達にとっては、異物にしか見えないし、言語によるコミュニケーションも、ほとんどとれない。第2部は2022年シンガポールが舞台のため翻訳機を通してのコミュニケーションはとれているのだが、これも、微妙に噛み合わない…

この状況が、かなり面白い。現代のようにメールなどの言葉がなくても、一緒にいるというだけで、何となく安心するという、人のつながりみたいな物がテーマだと思うので。

そして、最後の章で明かされる、タイムトラベルの真実が、残酷で切ない。そこで明かされる「ブルースカイ」の意味が分かるところはかなり悲しくなってしまった。

ちょいネタバレになるけど、感じとしては、すごくちゃんとプロットを練った、「ドニーダーゴ」な感じがした。

しかし、この人は破滅に向かう話を書かせると、もの凄い破壊力を発揮する人だと思う。なので、最近「GOSICK」シリーズのラストがかなり心配になってきていたり(作品内でも臭わせつつあるし)…。

しかし、オビのコピーはちょいとネタバレが過ぎるんじゃない?

この胸いっぱいの愛を・梶尾慎治◇小学館文庫

この胸いっぱいの愛を (小学館文庫)

この胸いっぱいの愛を (小学館文庫)

梶尾慎治原作「クロノス・ジョウンターの伝説」を元にした同名映画を原作者自らノベライズした作品。

鈴谷比呂志は、出張で子供の頃暮らしていた門司に飛行機で向かうことになった。しかし、気が付くと、20年前の門司にタイムスリップしていた。とりあえず昔暮らしていた旅館「鈴谷」に向かうことにしたのだが…

と、原作を知っている人なら分かると思うが、「クロノス・ジョウンターの伝説」とは、全くと言っていいほど違う作品になっている。まあ、タイムスリップの仕掛けとしてクロノス・ジョウンターシステムは出てくるんだけど、仕組みや理論も全く違う、タイムマシンとしてしか出てこない。

原作好きとしては、映画化の話を聞いたときは、ちょっとどうなのよ?と思っていたのだが、この作品を読んでみたら180度ひねってみたら、カジシン物になっちゃった、というか、黄泉がえり2っぽくなったというか…

基本ラインは、主人公「鈴谷」の話なのだが、他のキャラクター達も20年前の門司で何か後悔する出来事があった人ばかりで、それらを自分たちで解決していくという感じに進んでいく。そして、解決するとそこから消えていく、という感じなのだが、現代に戻ったら一体どうなっいるのか?いつまで、この時代にいられるのか?等の不安要素も設定されているので、ストーリー運びは定番っぽい物の最後が気になるので、一気に読んでしまう。

ただ、映画「黄泉がえり」のときもそうなのだが、この監督さん、以外と残酷な結末が好きなんじゃないかな?と、思うところが端々に出ていて、ただの感動物にならないようにしている感じがする。

タイムスリップ発動の音がレッドツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」だったり、持ってるお金は小銭しか使えなかったり、他の銀行系はダメだけど、昔作った郵貯カードは使えたり、ある家族の結末は、そう来たか!と思ったし、かなりタイムパラドックスは残ったまんまなんだけど、話としてはかなり面白かった。

前は、タイムトラベル使うだけなら、この原作つかわんでもいいだろ! 絶対見ない!と思ってたんだけど、かなりのカジシン分が入っているので、見てみようかなという気分になってきた(笑)

でも、ここまで変えて、しかも本人に書き下ろしでノベライズさせるなら、タイムトラベル、泣かせる物というお題を立てて、書き下ろしで原作を書いてもらえば良かったのに(福井晴敏の「ローレライ」みたいな感じ)と思ってしまったり。

でも、ラストのパラドックスは何とかならなかったのかなぁ、シーン的にはキレイなんだけど、ちょっと納得できないなぁ…

クロノス・ジョウンターの伝説 (ソノラマ文庫)

クロノス・ジョウンターの伝説 (ソノラマ文庫)

原作(つーか元ネタ)のこっちも、切ない話がつまってて、タイムトラベル物の傑作ですぞ。

美少女フィギュアコンベンション東京◇大田区産業プラザ 大展示ホール

http://www.bfct.jp/(←もう終わってますが)

BFC実行委員会主催の美少女系フィギュアをメインにしたイベント。

というか、浅井真紀氏原型のセイバーさん(Fate/stay night)フル可動フィギュアの受け渡しイベントみたいだった…
このフィギュア、ネットで予約を受け付け、当日会場で受け渡し、という方法をとっていたのだが、かなりの申し込みがあったらしく、11時頃に行ったのだが、結局買えたのが12時半過ぎ。せっかく、番号確認用のレジを千番区切りで作っていたのだから、それで並ばせれば良かったのに。そこが惜しいと思った(もしかすると、販売元であるスプリングはそう考えていたのかもしれないが…)。ただ、外に並ばされたので(まあ、会場内に列を作る余裕はないのだが)台風の雨が降らないで良かった、良かった。

その後、会場内の他のブースを見て回ったのだが、さすがにワンフェス、C3後間もないこともあって、どの企業も新製品としてはあまりぱっとした物がない感じだった。その中で、キャラアニにあった伊里野加奈(イリヤの空UFOの夏)はちょっといいかなと思ったり。発売されたら買っちゃうかも。物販に関しても、あまり力を入れてないというか、なんというか。等身大フィギュアのメーカー、ペーパームーンの展示(何十体もの等身大フィギュアが渦巻き状に並んでいる!)は、迫力というか怖いというか…
個人的にはAICフィギュアコレクションなんつーものが展示されててびっくり!ガシャポンなのか、箱ものなのかはわからないが、まだ、天地無用は商売になるのだなぁ…

イベントブースのほうは、盛り上がっていたっぽい。んだけど、歌物のイベントで模型にあまり興味なさそうな層の人達が盛り上がっている感じがして残念。もうちっと、模型関連のイベントを企画して欲しかったなぁ。例えば、原型師さん達のトークショーやら、ギャルゲーメーカーさんの広報さんたちの版権フィギュアのチェックするところとかのトークとか。

あとは、ブースの配置だと思う。なんか、閑散としているように見えてしまう配置になっていて、ちょっともの悲しかった。その点、ワンフェス等の企業コーナー等は結構ミッシリ感を出していて、経験値の差なのかなと思ったり。今回は第一回なので、次からに期待したいと思う。

で、帰りに秋葉原なぞに寄り道をしたら、イエローサブマリンでプライズ用のポストペットピンキーを発見! 値段も普通のピンキーとかわらなかったので(といっても、取り替えパーツがないんで割高言えば割高なんだが、アニメ店長ピンキーみたいなもんか)さくさく購入。絶対、ゲーセンではとれないし…。いや、今日は立体で良い買い物の出来た一日だった。

で、浅井氏のセイバーさん。パッケージ状態で、胴体と下半身が分離していたのにぎょっとしたものの(Vガンダムみたいにボトムアタックしそうだ)少しでも密着するところを少なくして、塗装部分が固まらないようにするための処理らしい、納得納得。

しかし、良く動きますな。多少、腕の部分の間接が抜けやすかったりするが、接着剤で受け口を太らせればダイジョブな感じ。可動に関してはコミック「天獄」1巻に付いてきた砂姫フィギュアのアップデートという感じ。砂姫はプロポーション維持のために足は可動しなかったのだが(差し替えパーツが付いていた)こちらは、動かせつつ、プロポーションも保っている感じ。可動部分のコツをつかめばポーズもガシガシ決まるし、かっこいい!個人的に、浅井氏アレンジの顔(特に目の表現)が好きなので、造形的にも文句なしの1品。

浅井氏の可動製品はそろえてはいるのだけど、様々なギミックがどんどん追加されて、面白くなっていく。今思うと、なぜにホイホイさんの通販を買わなかったのかが、とても悔やまれる。コンバットさんはとても期待しています、浅井さん。

しかし、秋葉原は人増えたねー、ご飯食べるの大変だった…

王様たち…

ウルトラマンマックスオリジナル・サウンドトラック・硨島邦明◇コロムビアミュージックエンタテインメント

ウルトラマンマックス オリジナル・サウンドトラック

ウルトラマンマックス オリジナル・サウンドトラック

ウルトラシリーズ最新作のサントラ盤。

世にも奇妙な物語」や「ガサラキ」等の音楽を手がけた硨島氏の最新作でもある一枚。
最近はアニメなども数多く手がけてはいるが、どちらかというと、ちょっと不思議系やエキセントリックなドラマ(深夜ドラマが多め)だったり、バレエの舞台音楽などが印象に残っているため、原点回帰な感じのマックスにあうのかな?と、多少不安だったのだが、始まってみれば、これがばっちり!

いつもの硨島節は抑えめに、どちらかというと冬木透のような感じの曲にしてある。基本的に希望に溢れた、口ずさんでしまうような発進テーマなど、明るい曲調をメインに作曲されていて、気持ちいい。オーケストラと、エレキ系の曲を上手いこと融合させている。正統派ヒーロー番組的なサントラに仕上がっている。

とはいうものの、怪獣、宇宙人系の曲は、エスニック調のいつもの硨島節が炸裂(ナイトヘッドかと思った(笑))し、不安感を煽る煽る!!子供の頃に聞いてたらトラウマになるかもしれない…

特に、過去のリメイク話「バラージ」の異国的なリズム(話自体は都内だったりするんだけど)、「怪獣島(レッドキングピグモンな話)」の、秘境探検物的な曲は硨島サウンドがかなりマッチしていて嬉しくなってしまう。

しかも、今回のサントラ、中国のスタジオでの収録とある。ワルシャワやヨーロッパ系でのサントラ収録というのは良く聞くが中国というのはあまり聞いたことがなかった。しかし、かなり良いのではないだろうか。力強さもあるし、メロディアスでもある。特にハープ系の音が美しく入ってくる。これからは中国録音というのも増えてくるのではないだろうか。

マックスという作品自体も、今風な設定などを盛り込んでいるが、昔のような大らかなヒーロー物を復活させようという気概に溢れていて楽しい番組だ。なので、少しでも長く続くように応援して行きたいものだ。

とりあえず、ダッシュバード買って、板野サーカスごっこでもするか!!

ウルトラマンマックス ダッシュマシンシリーズ1 ダッシュバード1号

ウルトラマンマックス ダッシュマシンシリーズ1 ダッシュバード1号

Wonder Festival 2005Summer◇東京ビッグサイト

http://www.kaiyodo.co.jp/wf/index.html(←もう、終わってますが)

海洋堂が主催する、国内最大規模の造形物イベントWF(通称ワンフェス)の夏版。

いやー、天気が良かったのはいいのだが、とにかく暑かった!おかげで、かなりの水分補給をしてしまい、汗が止まらなかった。そこがチトつらかった。

だけど、自分的には大満足だった。現地にはいつも通りに9時過ぎ位について、10時40分くらいに入場(ここまでの待ち時間がとにかく暑かった)。入るとすぐに見える企業エリアであるDブロックはかなりの大混雑! ここで欲しい物があるが、後回しにしてBブロックに直行。やはり、企業ブロックに行った人が多かったのか、何となく空いている感じ。どちらかが手に入ればいいと思っていた、星の白金氏のところの1/144 VF-1J 完全変形バルキリーと、皇帝ブランドのナデシコBが手に入り大満足! 特にナデシコBはナデシコ級戦艦の中では自分的に一番かっこいいデザインだと思っている艦なので、やっと手に入り嬉しかった(3年越しくらいかな、しかも前回は目の前で売れ切れた…)。バルキリーのほうはさすがにパーツが細かい、こりゃ作り甲斐がありそうなので、時間が出来たらじっくり仕上げようと思う。

その後、Aブロックをうろうろして、「エマ」の原作者、森薫氏の自画像フィギュア(変なスイッチがついてる!)や、「うろ覚えろ月姫」のポキータフィギュア、PINKYST.のブレザーパーツなどを購入。今回は、デフォルメキャラは多かった物の、前回に比べるとPINKYST.関係が少なくなった気がした。

で、ある程度Aブロックを見たところで、Dの企業ブロックへと移動。時間的には12時30分位。思った通り、行列などが減りはじめていたのだが、まだ少しいたので、M`sFACTORYのペンギンなどを見てみたり。Webのほうでは載っていなかった新作、湯上がりペンギンがかなり可愛かった。

その後、ワンダーショーケースの列に並ぶ(といっても10分程度の列なのだが)。ちょっと、計算が狂って、プラグマトーイズのキットは売れ切れていたのだが、第一目標だったFROG FLAGのキットはあったので満足満足。

後は、企業系のブースを少し見つつ、ホビージャパンへ。ぴくせるまりたんPINKYのキットを査収(かなり欲しかったので良かった、説明書を見て大爆笑しちゃったり)。
で、もう列のはけていたオフィシャルドリンクを購入。今回のウーロン茶は薄系の味で、自分の味覚にぴったり。会場内で1箱分(2本)飲んでしまった(荷物も軽くなって一石二鳥!)。ただ、宮川氏の造形も嫌いじゃないんだけど、個人的には大嶋氏や宮川氏のように幼い感じよりは、榎木ともひで氏のようにオトナっぽい造形の方が好きなんで、次回はそっち寄りだといいなぁ…

そこで、Aブロックに戻り、またぶらぶら見つつ、昼食。ソースの味がチープさを誘う焼きそばを食べ、気力を補給。こういうイベントのチープな味の物はなんで、こんなにおいしく感じるんだろう、結構謎だったり。

午後は、Bブロックを一通り見て回り。ほとんどのアイテムが完売していたが、見るだけでも楽しかった。ただ、「逆転裁判」の成歩堂くんが売り切れていたのが残念、ちょっと欲しかった。

その後、帰ろうと思ったのだが、ついでだからと、もう一度企業ブロックへ。マックスファクトリーで販売されている、声優関智一原型の「電人ザボーガー」!はどんなモンだろうと、見に行ってみた。結構大きく宣伝していたし、関智一も好きなので売れていればいいなと思ったのだが、4時頃にもかかわらず、まだ段ボール箱いっぱいに残っていたので、かなり心配に(ちなみに、閉会は5時)。もちろん、1個購入させていただきました(笑)。しかし、この造形、嫌いじゃないんだけどなぁ…やっぱり、ザボーガーがいけないのかなぁ…。同じ、ピープロならライオン丸とかの方が売れるのか? でも、残ったらどうするんだろう、人ごとながらかなり心配に…。

あとは、展示物などを眺めつつ帰ろうとしたら、イベントステージから、ガガガの主題歌が! 何事かと思ったら、遠藤正明氏が! 生で、歌が聴けて結構嬉しかった!!!!

と、個人的にはかなり大満足で帰ることの出来たイベントだった。

でも、歩きづめで、未だに足がパンパン、そこがかなりつらいー…

姑獲鳥の夏・監督■実相寺昭雄◇ヘラルド映画

http://www.ubume.net/

京極夏彦の通称妖怪シリーズ第一弾の映画化。

昭和二十七年、夏。都内にある産婦人科の医院、久遠寺医院の娘、梗子が二十ヶ月を過ぎても、妊娠状態のままだと言う噂が流れていた。同時に、久遠寺医院では、赤子が死産や失踪、梗子の夫である牧朗も密室から失踪するという事件が起きていた。そこで、小説家である関口や京極堂などの仲間が調査に乗り出したのだが…。

いや、よくぞここまでと言っていいくらい、原作の世界を再現した映画。と、同時に最初から最後まで、実相寺演出が堪能できる、実相寺映画。
原作が発表されてから十年、やっと映像化されたとおもったら、かなりの出来で自分的には大満足ですよ!

まずはキャスト、まあここまでの人気作、どんなキャストでも文句言う人は言うだろうけど、自分的にはかなりイメージに近くて良かった。原作でも怖い顔と表現されている京極堂堤真一は、いつも不機嫌そうだし、猿みたいな関口君の永瀬正敏はいつもの格好良さのかけらもない、お猿顔で挙動不審、ヤクザみたいな木場修は、ごつい顔の宮迫。白いスーツ姿はまさにヤクザみたい。で、探偵こと榎木津は阿部寛!もう少し、はじけた演技がいいなと思ったけど、姑獲鳥の頃は、まだちょっと変な人だったんだよなあ(暴走するのは魍魎の匣から)。中禅寺敦子の田中麗奈はハンチングが似合っていてとても良い。
そしてなんと言っても、久遠寺涼子(梗子)の原田知世!清楚で可憐で、しかも怖い!キャストを聞いたときから合ってるとは思っていたけど、はまりすぎ!こりゃ、関口君も惑わされるわ…

サブキャラも出番が少ないながらも、そうそうこんなの!と思うほどはまっていて、続編が楽しみになる。和寅やら、里村医師、鳥口なんかは次作あたりから活躍するのかな?

映画自体も、シナリオはストーリーラインをほぼ忠実にアレンジ(というか刈り込み)をしていて、ミステリ寄りになっている。しかし、演出が実相寺氏ということを考えてそうしてあるのだと思う。画面自体は斜めだったり、歪んだり、物影だったり、舞台っぽくなったりと実相寺氏お得意の演出技法でかなり幻想的な世界を構築している。なので、あの幻想的な感じなのにミステリという原作特有の空気が再現されていて、かなり満足ですよ。
あと夏!夏特有の高い空や空気感がとても素晴らしい!

まあ、トリックやらなんやらは、えーっ!となる人もいるとは思うけど、まあ、原作通りなんでね。映像で、実相寺氏だから絶対物影処理だと思ったら、こう来たか!と唸ってしまった。映像的に嘘をつかず、上手い処理だなあと感心したり。

と、かなり自分は褒めてるけど、原作同様、ダメな人には全くダメな作品だと思うんで、その点は注意したほうがいいかも。

原作ファンや実相寺演出が好きな人にはおすすめな作品。ただ、見る前後に、原作を読むこと、そうすれば楽しさ倍増!

堤真一の低音でご託並べられると、そうかな、と思ってしまい、関口気分が味わえますぞ!

最後に、京極夏彦の完璧な演技、つーかメイク?(まじでそっくり!)に大爆笑しちゃダメ(笑)


今なら、薄くなって読みやすくなった文庫版で予習、復習するのもいいかも。

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 上 (講談社文庫)

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 上 (講談社文庫)

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 下 (講談社文庫)

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 下 (講談社文庫)

宇宙戦争・監督■スティーブン・スピルバーグ◇パラマウント映画

http://www.uchu-sensou.jp/top.html

H・Gウエルズの古典的SF小説を原作とした、対エイリアン戦映画。

港湾コンテナ作業員であるトム・クルーズは、離婚した妻に引き取られた子供を週末訪問で迎えた。その日は、天候もおかしかった。そして、地下から巨大なトライポッドが姿を現した… そして世界は、狂い始めていく…

うわー!という感じの傑作! スピルバーグの本気をかなり感じた映画!

なんか、評判を見るとあまりよろしくなかったりするんだけど、多分、求めてる物が違ったんだと思う。確かに、パニックムービーではあるんだけど、これは、インデペンデンスデイアルマゲドン(微妙なのばかり選んじゃった)などの、希望があるパニック物ではなく、もうこの後には絶望しか残されていないパニック物だと思う。なので、助かった!いやっほー!なエンタテイメントではなく、世界が終末へと進んでいく様を映像にして見せているのだと思う。

なにが近いかというと、多分、教習所で見せられる、無茶苦茶救いのない交通事故の加害者のドラマ。

信仰のよりどころとなる、教会を破壊しつつ現れるトライポッド。火を噴き出し、誰もコントロールする者のいない、だけど走り続けている列車。それなのにシステム的に淡々と動き続けている踏切。攻撃をしているものの、直接的描写はまるでなく、全滅しているであろう爆発だけを表現されている軍隊。川の上流から、ゆっくりとそして大量に流れてくる死体。着ている者が粉砕され、空からばらまかれる衣服。乗客の姿はまるでなく、破壊された跡のみを見せつける墜落した旅客機。否応なしに横倒しにされるフェリー。動く車を持っているというだけで、襲いかかってくる群衆。人類の意志をはなれ、コントロールを失っていく機械たち…(ん、もしかすると冒頭で息子とキャッチボールしているときに、カッとなって窓ガラス割っちゃうのも伏線か?)。等々、圧倒的なビジュアルで、人類にはもうどうしようもないという状況をスピルバーグは、観客に見せつけていく。

これだけでも、かなり怖い状況なのに、主人公であるトム一家にカメラを固定して、情報の遮断まで絶望的な演出をしている。
こういう映画でありがちな神の視点(なのじゃよ博士とか、政府のえらいさんが知り合いとか、説明に便利なキャラやシチュ)は、冒頭と最後のナレーションのみ、後は伝聞でしか情報が与えられない。なので、それが本当なのか嘘なのかも分からない。最初にトムが決めた「ボストンのおばあちゃんの家に行く」という選択肢でさえ、正しいのか分からない(なんとなく、廃墟が広がっていたってラストだったらどうしようと思っていた)。道中、すれ違う人々も、最小限の情報しか提示しない。突然いるTVクルーや、たまたまであった近所の家族など。唐突に現れては、トムの視界から消えていく。ただ、実際生活している場合、この人達はどういう人でこう旅してここまで来たなどということは、あまり説明しないのではないだろうか(まあ、する人もいるけど)。なので、観客は、トムと同じ情報しか持たず、トムと同じ体験しか許されない。

映画を見ている間、「この状況、この絶望感、あんたはどうするよ?」とスピルバーグに問われている感じが常にあった。

おまけに、絶望的状況になったとき、敵は火星人だけじゃない、さっきまで隣人だった者までも敵になるという状況まで用意して、観客の絶望をさらにあおっていく。きつい、かなりきつい話だった。

もちろん、話のメインの柱はどんなことがあっても家族を守るというのがあるのだけど、絶対、終末になった世界でどう生きる?というのがスピルバーグの描きたかったことだと思う。だからこそ、家族を守るために戦わない、というキャラクターにしたのだと思うし(だけど、あることはしてしまう…)。

しかし、ここまで絶望的な無力感を漂わせたトムクルーズって初めて見たなあ。

ただ、なんとなく笑いどころというか、息抜きシーンもあって(意図的なのかは分からないけど)、娘がトイレをしたいというとき、「見えるところでしろ!」「変態!」とか、後生大事に抱えてきた段ボールの中に調味料しか入ってなかったりとか、思わず笑ってしまうポイントもあったりして。

そして、もう一つやりたかったことは、「完璧な怪獣映画」なのではないだろうか。そうだとすると原作からの一番大きな変更点である、上空からではなく、地中から姿を現すトライポッドというのがよく分かる。
アスファルトに亀裂が走り、路肩に止まった車が振動し、窓ガラスは割れ落ちていき、建物を破壊しつつ、その中から巨大な影が現れる。もう、モンクのないくらい完璧なシチュエーション! おまけに、水面下が妖しく光り、渦巻きを発生させながら巨大な影が立ち上がる、なんてシーンもあったりして。最初にトライポッドが出てくるシーンじゃ、伊福部節っぽい、ホーンと打楽器が鳴ってるし(笑)
おまけに大阪じゃあトライポッドを破壊してるらしいし(笑) 巨大な物が人を襲う恐ろしさというのが、もの凄くリアルに演出されていると思う。今まではガメラ3の渋谷のシーンが、巨大生物が突如現れた理不尽さを一番表現してたと思ったけど、ちょっと、こっちの方が上になったかも…

あと、最後のオチだけど(宇宙人撃退の方ね)は、あれは原作通りだしいいんじゃないかと思う。もう少し複線があればという意見もあったけど、トム視点で分かることじゃないので、いきなり入れるとちょっとおかしくなっちゃうと思うし。結局、人類はなんにも役に立たないという無力感も引き立つし、いい締めだと思う。

トムも、結局娘は母の方へ行き、仲の悪かった息子とは少しだけ仲良くなった。でも、元奥さんお家で住むわけにもいかないから、このあと、多分ひとりで、どこかで生きていくっていう、世界が終末を迎えるかもしれないけど、人生っていうのはそういうのと関係なしに進んでいく、な感じの寂しい終わりかただと思う。
息子が生きてたのは、ご都合じゃないかとも思うんだけど、トムを認めてくれる人が、誰もいないのは、悲しすぎるんで追加したんじゃないだろうか?じゃないと、お父さん達は席を立てないよ。

と、自分的には大満足の映画、万人に勧められる映画じゃないけど、ビビッと来た人は、是非とも見て欲しい映画。でも、圧倒的ビジュアルはたまらんものがあるので、是非大画面で見て欲しい映画ですよ。

たまには、与えられる情報をまんま受け取るんじゃなくて、作品の意図を考えるのも、いいもんですぞ。

おまけ、シチュエーションはみんな知ってるよね?的に進むんで、原作は読んでおいたほうがいいかも。もう、古典だけど面白いですよー、つか、怖かったり…

宇宙戦争 (ハヤカワ文庫SF)

宇宙戦争 (ハヤカワ文庫SF)